海外FXの場合、累進課税制度なので利益を出せば出すほど税率が上がっていきます。そのため、法人化して節税したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、どのくらいFXで所得があれば法人化したら良いのか基準がわからない方も多いかと思います。そこで今回は海外FXで法人化するのに向いている方や、法人化するメリット・デメリットをご紹介します。
FXで法人化するのに適した方
会社を設立しても、資金面に無理が生じるようでは本末転倒です。実際にどのような人が法人するのに適しているか解説していきます。
FXで法人化するのにおすすめな人
FXの法人化をするの向いている方は、ずばり継続的に利益を出している人です。目安としては年間におおよそ900万円以上の利益を出し続けられれば法人化するのがおすすめと言えるでしょう。
その理由は個人事業ではかからない初期費用や毎年掛かる税金です。会社を創設するにあたって最低でも約21〜25万円の費用が必要になります。
FXの法人と個人の税金の違い
FXを法人化した場合と個人で収めた場合どのくらい税率が異なるのか比較してみましょう。
海外FX・国内FXで法人化した場合
FXを法人化した場合の法人税は下記のとおりです。※平成31年以降に開業した場合
税率 | |||
---|---|---|---|
資本金1億円以下 の法人 |
年800万円以下の部分 | 下記以外の法人 | 15% |
適用除外事業者 | 19% | ||
年800万円超の部分 | 年800万円超の部分 | 23.20% | |
上記以外の 普通法人 |
– | 年800万円以下の部分 | 23.20% |
海外FX・国内FX問わず、法人税には15~23,2%の税率が課せられます。
国内FXで法人化してない場合
納税対象 | 所得税 | 住民税 | 復興特別 所得税 |
|
---|---|---|---|---|
給与受給者 | 20万円~ | 10% | 10% | 2.1% |
非給与時給者 | 36万円~ |
国内FXの場合、申告分離課税のため一律おおよそ20%の納税が課せられます。
海外FXで法人化していない場合
所得金額 | 所得税 | 控除額 | 住民税 | |
---|---|---|---|---|
給与受給者 | 20~195万円 | 5% | 0円 | 10% |
非給与時給者 | 36~195万円 | |||
給与受給者 非給与受給者 |
195~330万円 | 10% | 9万7,500円 | |
330~695万円 | 20% | 42万7,500円 | ||
695~900万円 | 23% | 63万6,000円 | ||
900~1,800万円 | 33% | 153万6,000円 | ||
1,800~4,000万円 | 40% | 279万6,000円 | ||
4,000~万円 | 45% | 479万6,000円 |
海外FXは累進課税のため、利益を出せば出すほど税率も高くなります。そのため、控除額を考慮しても年間約340万円以下の所得の方は海外FXがおすすめといえます。
FXで法人化するメリット
法人するメリットは以下のとおりです。
- 役員報酬で調節できる
- 経費の幅が広がる
- 損益通算の幅が広い
- 決算期を調整できる
- 繰越控除(損失繰越)が10年できる
- 含み損も計上できる
以下詳しく解説していきます。
役員報酬で調節できる
法人化した場合、役員報酬を調整することで節税できます。
役員報酬とはいわゆる経営者の給料のことです。役員報酬は会社員の給料と同様に、所得に応じて税率は上がりますが(累進課税)、会社と個人の所得をある程度分散したほうが法人税・所得税ともに税負担を少なくすることができます。
経費の幅が広がる
個人事業の場合、経費として認められるのはFXにだけ関わる費用か否か。と、判断が非常に厳しいものでしたが、法人化すると会社に関わる出費がすべて経費として計上できます。
例えばパソコンです。個人トレーダーの場合、FX専用のパソコンでなければ経費として認められませんが、法人の場合、領収書に会社名を記載しておけば会社の備品として認められる場合が高いです。
その他に個人事業だと判断が難しい交際費なども、経費として認められるケースが高いです。
損益通算の幅が広い
個人でFXをしている場合、損失が出た場合は雑所得に分類されるFXやアフィリエイトのみ損益通算できますが、法人化した場合は雑所得問わず、その他の事業の損益も相殺対象になります。法人化するとすべての損益を相殺できるため、結果的に節税対策につながるのです。
損益通算とは、赤字(損失)と黒字(利益)を相殺することを言います。
例えば、1年間にAのFX業者で1000万円の利益がでてBのFX業者で800万円の損失と、仮想通貨で100万円の損失が出た場合、利益と損失を相殺して100万円の利益として計上することができます。
繰越控除(損失繰越)が10年できる
先ほど損益通算ができると申し上げましたが、損益が利益を上回る可能性も十分ありえます。その際、個人で海外FXをする場合は繰越控除認められていませんが、法人の場合は繰越控除が10年間有効です。
繰越控除の年数 | |
---|---|
法人の国内・海外FX口座 | 10年間 |
個人の国内FX口座 | 3年間 |
個人の海外FX口座 | 0年間 |
そのため、昨年は損失となり今年に利益を上げた場合は、昨年の損失を一部相殺することが 可能になります。
決算期を調整できる
法人口座の場合、決算期を調整することが可能です。決算書に記載する所得が800万円以下の場合税率は15%、800万円以上の場合は23.2%となるため、その金額を目安に決算期を調整するのが得策と言えます。
しかし、決算期を変更する手間はかかりますので、注意しましょう。
決算とは、法人化した企業が1年間の損益をまとめて決算書として確定させ、税務署などに提出することです。その2ヶ月以内に仕払う税金を確定させ確定申告を提出します。
含み損も計上できる
個人でFXをしているのと異なり、決算期日に浮遊しているポジションの含み損益を決算書に計上することができます。そのため、保有しているポジションが損失を抱えている場合、節税に繋がります。保有ポジションということは、決算時に含み損だったポジションも決算後に含み益に変わる場合もあるため、実質的な損失ではありません。
逆に、含み益だった場合はその分課税額も上がるため注意が必要です。
FXで法人化するデメリット
メリットを見ると非常に魅力的ではありますが、法人化することでのデメリットも当然あります。
- 課税対象が増える
- 赤字でも地方税が掛かる
以下詳しく解説していきます。
課税対象が増える
法人としてFXを行う場合、課税対象が増えます。大きく分かると3種類あり、法人税・法人事業税・法人住民税に分けられます。
納税先 | 課税対象 | 赤字の場合 | |
---|---|---|---|
法人税 | 国 | 会社が得た各事業年度の所得 | 支払い義務なし |
法人事業税 | 地方自治体 | 会社が得た各事業年度の所得 | 支払い義務なし |
法人住民税 | 地方自治体 | 法人所得税を基準に 算出する”法人税割” 資本金・従業員数で 算出する”均等割”の合計 |
支払い義務あり (均等割の部分) |
この他にも地方法人特別税・消費税・印紙税・源泉所得税などなどかかってくるのが法人の特徴です。個人でFXをするときの課税対象は所得税・住民税・復興特別住民税のみなのでその差は歴然です。
赤字でも住民税が掛かる
上記の表でも記述していますが、法人の場合、毎年住民税を支払わなければなりません。住民税は固定でかかる費用なので、たとえ赤字でも納める必要があります。
資本金 | 地方税 |
---|---|
~1,000万円 | 年間7万円 |
1,000万円~ | 年間18万円 |
個人でFXをしている場合は20万円もしくは36万円の所得でなければ、税金を収める必要がないため、ここが法人との大きな差です。
法人化は節税しやすいが要注意
序盤にもお伝えしましたが、FXを法人化する場合は簡単に目安を定めるのであれば年間900万円以上をコンスタントに稼ぐことが出来る方がおすすめと言えます。法人化すると経費などで節税範囲が広がりますが、それと引き換えに個人ではかからなかった税金が必ず発生します。
自分がどの程度FXで安定できるかをしっかり見定めて法人化しましょう。